なぜ今、シェフはデザートにMSGを足すのか―甘さを引き立てる、うま味という設計思想
「MSGは料理に使うもの。デザートには合わない」
そう思っている人は、きっと少なくないはずです。
でももし、ブラウニーやアイスクリーム、キャラメルに、ほんの少しのMSGが使われていたら——?
今回は、アメリカの食メディア Epicurious に掲載された「Yes, MSG Belongs in Desserts」 という記事をもとに、“甘い世界におけるMSG” という少し意外で、でも理にかなった話をご紹介します。
記事の書き出しは、SNS上に挙がった1つの声から始まります。
「なぜMSGは、甘いものには使われないの?」
コメント欄では、「MSGはしょっぱい料理をおいしくするもの」「デザートに入れると、変な味になる」といった声が多く見られました。
中には、「ピーナッツバターアイスに入れたら“ビーフっぽく”なった」という体験談も。
一般的には、MSGというと中華料理やスナック、加工食品のイメージが先行しやすく、「デザートとうま味」という組み合わせは、まだあまりなじみがないかもしれません。
一方で、私たちはすでにMSGを含む要素が入ったデザートを、おいしいと感じてきました。
これらはすべて、甘さ+塩味+うま味 のバランスが生むおいしさ。
つまり、「MSGがデザートに使われていない」のではなく、“気づかない形で、すでに取り入れられてきた” とも言えるのです。
では、MSGはどんなデザートに向いているのでしょうか?
相性がいい素材
これらはグルタミン酸を多く含む素材で、MSGを加えることで味に奥行きが生まれます。
たとえば、バニラアイスに少量のMSGを加えると、
と表現されています。
記事の中でも印象的なのが、料理家アビ・バリンギットさんの MSG入りブラウニー。
スパイスとヌガーを使った濃厚なブラウニーに、MSGを0.2〜0.4%だけ加える。
結果は——
MSG入りの方が、スパイスの香りがよりはっきりし、「もう一口食べたくなる」仕上がりに。
ブラインドテストでも、ほぼ全員が違いを感じ取ったそうです。
この記事を通して伝わってくるのは、MSGは主役ではなく、チューナーのような存在だということ。
甘さを強くするわけでも、しょっぱくするわけでもない。
すでにある味を整え、全体を一段引き上げる。
それが、デザートにおけるMSGの役割なのです。
「デザートにMSG?」という違和感は、かつて「中華料理=MSG=危険」と信じられていた頃の名残なのかもしれません。
甘い世界にも、うま味は居場所を持っている。
そんな新しい視点をくれる記事でした。
参考記事
Anikah Shaokat “Yes, MSG Belongs in Desserts” Epicurious, July 13, 2023






